「今度ランチご馳走するね」は、演技です
30代後半・既婚の女性に、お金の受け取り方について聞きました。
彼女がやっていることは、こうです。
- 会計のとき、財布を触るそぶりをする
- 自分のほうが年上なら、「今度ランチご馳走するね」と言う
- 食べているとき、本当においしそうにする
全部、演技です。
彼女は「テクニック」という言い方をしていました。自然にやっているのではなく、意識してやっている。
この記事は、その裏返しを書きます。受け取る側に作法があるということは、渡す側にも作法があるということだからです。男性向けにこの向きで書かれたものが見当たらなかったので、彼女の証言をもとに整理しました。
なぜ、そこまでするのか
3つとも、狙いは同じでした。
相手に恥をかかせないためです。
財布を触るそぶりは「私は当然のように奢られる人間ではない」という表明です。実際に出す気はない。それでも、その一往復があるかないかで、奢った側の気分がまったく違う。
「今度ランチご馳走するね」は、金額を等価にする言葉ではありません。一方通行の関係ではないことにするための言葉です。ランチは実際にはほとんど実現しないそうです。それでいい。
おいしそうに食べるのは、いちばん直接的です。払った金が何に変わったのかが、その場で見える。
原理はビジネスの接待に近いと思います。相手の面子を潰さない。貸し借りを一方通行にしない。使った金の行き先を見せる。彼女が言語化していたのは、ほぼそれでした。
ここから、渡す側の話です
同じ原理を、逆から見ます。渡し方を間違えると、相手に恥をかかせます。
恥をかかせた相手とは、続きません。彼女の言葉を借りるなら「プライドの問題」です。
① 金額は、会う前に、文字で、一度だけ
彼女は、会うと決める前に必ず2つ確認すると言っていました。
- 1日のデート金額
- 職業
つまり、当日になって金額の話をするのは遅いということです。
当日その場で決めると、会話が交渉になります。交渉になった時点で、相手は「値段をつけられている」状態に置かれる。ここで一度でも恥をかかせると、その日は最後まで硬いままです。
事前に、文字で、一度だけ。会ってからは金額の話を持ち出さない。これだけで当日の空気が変わります。
② 財布を、相手の前に出さない
彼女が財布を触るそぶりをするのは、そこに財布を出す場面があるからです。
裏返すと、こちらが先に消しておけばいい。
- 事前に決済を済ませておく
- 中座して先に会計する
- 店に事前に伝えておく
支払いの場面そのものを相手の視界から外す。そうすると、彼女は財布を触るそぶりをする必要がなくなります。お互いに演技をしなくていい状態が、いちばん自然です。
③ 渡すのは、帰り際ではなく、最初
ここは彼女の運用がそのまま答えでした。
彼女は、定期的に会う相手には先に受け取るそうです。理由は「そのほうが続くから」。
帰り際に渡すと、その日の対価という形になります。先に渡すと、その日は対価の話が終わった状態で始まる。何をしても支払いの話に戻らない。
渡す側から見ても同じです。先に渡したほうが、その日の時間が対価の値踏みから外れます。
④ PayPayは、履歴が消えません
彼女は、支払いをPayPayにしてもらうと言っていました。手渡しの生々しさが消えるからです。合理的だと思います。
ただし、ここは注意が要ります。
PayPayの取引履歴は、ユーザー自身では削除も非表示もできません。公式ヘルプとサポートの回答で確認しました。消せるのはアカウントを解約したときだけです。
つまり、見る人が見れば、履歴から関係が分かります。送った側にも、受け取った側にも残ります。
生々しさを消す代わりに、記録が残る。どちらを取るかの判断であって、PayPayが安全という話ではありません。
⑤ 見られているのは、金額だけではない
彼女が先に確認するのは「1日のデート金額」と「職業」の2つでした。職業は「基本、経営者」とのことでした。
そして、無料会員のまま始めた男性が続かない理由を、彼女はこう説明しました。
女性側が、プラン・職業・お金があるかを見ているから。
これは感覚ではなく、仕様の話でもあります。ラブアンは男性の会員グレード(無料/ゴールド/プラチナ)が女性側から見えます。プロフィールには職業・体型・飲酒喫煙・婚姻状況の項目があり、運営が収入を確認した男性には「年収証」のタグが付きます。
金額をいくら綺麗に渡しても、その前段で判定は終わっています。
ただし、上限もあります
ここは意外でした。彼女は、金持ちすぎる男性も避けると言っていました。
理由は「ワンオブゼムになるから」。
年収が高すぎる男性は複数の相手と同時に進行していることが多く、関係が安定しない。だから彼女は、中の上くらいの年収で、一途な相手のほうがいいと考えている。
彼女が既婚者クラブをやめた理由のひとつも、これでした。上を上を狙うと、相手は誰にとっても上位なので、結局ワンオブゼムになって疲れる。
1強である必要はない、というより、1強でないほうが選ばれることがある。
これは、この領域の男性側の前提をひっくり返す話だと思います。金額で上に行こうとするほど、関係は不安定になる。
まとめ
彼女の3つの作法は、全部「相手に恥をかかせない」ための演技でした。渡す側の作法も、原理は同じです。
- 金額は、会う前に、文字で、一度だけ
- 財布を出す場面そのものを消す
- 渡すのは帰り際ではなく、最初
- PayPayの履歴は自分では消せない
- 金額の前に、グレードと職業で判定は終わっている
- 上限もある。1強を目指すと不安定になる
ひとつだけ付け加えると、これを読んだからといって、こちらも演技をする必要はありません。
彼女がやっていたのは、相手に恥をかかせずに、気持ちよく払わせる技術です。こちらがやるべきなのは、その技術を使わせなくて済む状態を作ることのほうだと思っています。